クリニックの口コミ返信の例文来院の事実に触れずに書く型

クリニックや歯科から、こういう相談が届きます。
口コミに返信したほうがいいのは分かるのですが、どこまで書いていいのか分からず、結局そのままにしています。
先に結論を書きます。クリニックの口コミ返信は、書き足す仕事ではなく、削る仕事です。
飲食店や美容室なら、返信は温かくするほど良くなります。クリニックは逆です。触れてよい範囲が、他の業種よりはっきり狭い。 温かみを足そうとした一文が、そのまま危ない一文になります。
この記事では、その狭い範囲の中で使える型と例文をまとめます。決めるのは「何を書くか」より先に、「何を書かないか」です。
クリニックの口コミ返信は、他の業種と何が違うのか
違いは3つです。この3つを外せば、あとは他の業種と同じ書き方で通ります。

いちばん引っかかるのは1つ目です。
飲食店なら「先日はご来店いただきありがとうございました」が正解の書き出しです。クリニックで同じ書き方をすると、その人が受診したことを、医療機関の側が公開の場で認めたことになります。
投稿した本人が自分で書いているとしても、扱いは変わりません。投稿は本人の判断ですが、返信は施設の判断だからです。 健康や受診に関する情報は、個人情報の中でもとりわけ慎重に扱うことが求められています。そこに施設側から情報を足す形になります。
レビューデスク「本人が書いているのに、こちらが受けてはいけないのですか」とよく聞かれます。受けて構いません。触れずに受けます。 「ご投稿ありがとうございます」から始めれば、来院に触れずに感謝を伝えられます。書き出しを1行変えるだけです。
2つ目も同じ理屈です。口コミに「腰の痛みが楽になりました」と書いてあったとして、返信で「腰の痛みでお困りとのことでしたが」と繰り返した瞬間に、その人の症状を施設が公開したことになります。受けるときは、内容に触れずに受けてください。
3つ目は、良い口コミへの返信でこそ出てきます。喜んでいる人に応えようとすると、「今後もしっかり改善してまいります」のような一文が自然に出てきます。改善を約束した形になるので、ここは書けません。
返信を書く前に決める3つのこと
例文に入る前に、院内で決めておくことがあります。ここを決めずに書き始めると、返す人によって内容が変わります。
決めるのは3つです。
- 主語を「当院」に統一する … 「私は」「院長の〇〇です」を使わない
- 返信する範囲を決める … 全件返信か、低評価だけか。途中で変えない
- 使わない言い回しを先に決める … 書きたくなるが書けない文を、紙にして受付に貼る
2つ目について補足します。全件に返信することを勧めています。 良い口コミにだけ返信して低評価を放置すると、返信していない口コミだけが目立ちます。読む人は、そこを見ます。
3つ目が、この記事でいちばん役に立つところです。
| 書きたくなるが、書けない文 | なぜ書けないか |
|---|---|
| ご来院いただきありがとうございました | 受診の事実を、施設側が認めた形になります |
| 〇〇の症状でお困りとのことでしたが | 症状を施設が公開したことになります |
| 続けていただければ必ず改善します | 効果の断定です |
| そのような患者様はいらっしゃいません | 事実の否定です。争いが公開の場に残ります |
| 〇〇医師にも伝えておきます | 担当医が誰かを、施設側が明かしています |
| 詳しくは公式LINEをご覧ください | 宣伝の場として使っていると読めます |
この6つを紙にして、返信を書く場所に置いてください。判断の基準を渡さずに任せると、人によって返信の重さが変わります。

口調と署名は、一度決めたら毎回同じものを使います。レビューデスクでは、これを施設ごとに1回登録しておく形にしています。返信のたびに考え直さないための仕組みです。AIに下書きを作らせている場合は、使わない言い回しをそのまま登録してください。書かせない設定にしておくのがいちばん確実です。詳しくは口コミ返信をAIで書くときの線引きにまとめてあります。
クリニックの口コミ返信の例文① 星5・星4に返す
良い口コミへの返信は、2〜3行で足ります。 長くする必要はありません。
型はこの3つの順番です。
- 投稿への感謝(来院ではなく、投稿に対して)
- 中身に触れずに受ける
- 院内で共有する、と伝える
説明が丁寧だった、という口コミに
ご投稿ありがとうございます。
安心してお過ごしいただけたようで、何よりです。
いただいたお言葉は、院内で共有いたします。
「安心して」だけで受けています。何の説明だったか、何の症状だったかは書きません。書かなくても、投稿した本人には伝わります。
受付や看護師の対応をほめられた口コミに
ご投稿ありがとうございます。
スタッフの対応についてお言葉をいただき、うれしく思います。
本人にもそのまま伝えさせていただきます。
ここは、クリニックの返信で唯一のびのび書けるところです。対応への評価は、症状とも治療とも関係がありません。 個人名を出さずに「スタッフ」「本人」と受ければ、それで足ります。
待ち時間が短かった、という口コミに
ご投稿ありがとうございます。
お時間について触れていただき、ありがとうございます。
今後も、ご案内の流れを院内で見直してまいります。
「これからもお待たせしません」とは書かないでください。 守れません。混む日は必ず来ます。
やってしまいがちな、悪い例と直し
(危ない返信)
この度はご来院いただき、誠にありがとうございました。
花粉症のお薬が合ったようで安心いたしました。
またお困りの際は、いつでもお越しください。
3行のうち、2行が危ないところに触れています。1行目は受診の事実、2行目は症状と処方の内容です。
(直したもの)
ご投稿ありがとうございます。
落ち着いてお過ごしいただけているようで、何よりです。
気になることがありましたら、いつでもご相談ください。
素っ気なく見えますが、これで正しいです。 温かみを足そうとすると、必ず来院か症状のどちらかに触れます。
例文② 星3の「待ち時間」と「説明不足」に返す
星3で届く不満は、だいたい2種類に絞られます。待ち時間と、説明の不足です。
星3は、全部を謝る場所ではありません。謝る範囲を1つに限定してください。 星3に星1と同じ重さで謝ると、話が噛み合っていない返信になります。
待ち時間への不満に
ご投稿ありがとうございます。
お待たせしてしまい、失礼いたしました。
予約の枠と当日の受付の配分について、院内で見直してまいります。
謝っているのは待たせたことだけです。診療の中身については何も言っていません。 これで足ります。
「二度とお待たせしません」「〇分以内にご案内します」は書かないでください。 公開の場に数字を出すと、次に超えたときにその返信が残ります。
説明が足りなかった、という不満に
ここは受け止めやすいところです。説明が足りなかったかどうかは、受け取った側が決めることだからです。
ご投稿ありがとうございます。
ご説明が十分でなかった点、申し訳ございませんでした。
分かりにくい点がありましたら、その場で遠慮なくお申し付けください。
「きちんと説明したはずです」と書かないでください。 診療の中で何を話したかを公開の場で争う形になります。読む人には、揉めているようにしか見えません。
「何を書けばよかったのか分からない」低評価に
星3で、理由が書かれていない口コミも届きます。理由が分からないので、多くの院がここで止まります。
ご投稿ありがとうございます。
至らない点があり、申し訳ございませんでした。
お気づきの点がありましたら、受付までお聞かせいただけますと幸いです。
推測して謝らないでください。 「お待たせしたことと存じます」と書いて、実は別の理由だった場合、返信が的外れなまま残ります。理由が分からないときは、聞く形で止めます。
例文③ 星1・星2の、対応と費用への不満に返す
ここがいちばん難しいところです。原則は4つです。
気をつけること
この4つを外さないでください。 1つ、事実関係を書かない。2つ、反論しない。3つ、個別の対応を公開の場で約束しない。4つ、連絡先を書かず「受付まで」で止める。
低評価への返信の型そのものは、業種を問わず同じです。低評価の口コミへの返信、例文つきに基本の型をまとめてあります。ここでは、クリニックで特に危ないところだけを書きます。
受付や電話の対応への不満に
ご投稿ありがとうございます。
ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした。
いただいたご指摘について、院内で確認いたします。
「確認いたします」で止めてください。 「すでに改善いたしました」と過去形で書くと、まだ直していない場合は虚偽になり、直した場合も次に同じ指摘が来たときに嘘になります。
費用の説明と違った、という不満に
自費診療のある院で、いちばん多い低評価です。
(危ない返信)
初診時に〇〇円とご案内しております。
追加の費用については同意書にご署名をいただいております。
正しいことを書いているつもりでも、やり取りの中身を施設側から公開しています。 同意書に署名した人が誰かを、読む人に伝えたことにもなります。
(直したもの)
ご投稿ありがとうございます。
費用のご説明について、行き違いがあったこと申し訳ございません。
差し支えなければ、受付までご一報いただけますでしょうか。
金額を返信に書かないでください。 個別の事情を説明するほど、その人の受診内容が公開の場に出ていきます。話は、公開されない場所に移します。
治療の結果への不満に
いちばん返しにくいものです。ここは、書ける範囲がほとんどありません。
ご投稿ありがとうございます。
ご期待に沿えず、申し訳ございませんでした。
今後の対応について、受付までご相談いただけますでしょうか。
3行で終わりです。経過も、処置の内容も、結果の妥当性も書きません。 書き足したくなりますが、足した分だけ危なくなります。
代行で入るとき、クリニックだけは、返信の型を先に固定してから始めます。 他の業種は書きながら整えていけますが、ここは1行の書き足しが線を越えます。
もう1つ決めていることがあります。事実が食い違っている口コミには、院に確認せずに返信を書きません。 分からないときは「確認いたします」で止めます。返信はあとから編集できますが、読んだ人の記憶は編集できません。
なお、明らかに来院していない人の投稿や、誹謗中傷にあたるものは、返信の前に報告を検討してください。消せるものと消せないものの線引きは、Google口コミの削除方法に書いてあります。「事実と違う」というだけでは消えません。 消えなかった場合に備えて、返信は用意しておいてください。
歯科・美容クリニック・整骨院で変わるところ
同じ「クリニック」でも、引っかかりやすい場所が違います。自分のところだけ読んでください。
歯科
出てくるのは、担当医と、自費診療の費用です。
口コミに「〇〇先生に診てもらいました」と書かれていても、返信で名前を繰り返さないでください。「担当の者」と受けます。名前を出すと、その日その人を誰が診たかを施設が確定させたことになります。
治療の途中で来なくなった方からの低評価も届きます。ここでも、通院の経過は書けません。
ご投稿ありがとうございます。
ご不安を残したまま終わってしまったこと、申し訳ございません。
今後のことについて、受付までご相談いただけますでしょうか。
美容クリニック・美容皮膚科
いちばん危ないのは、施術名と部位です。口コミに書いてあっても、返信で繰り返さないでください。
もう1つ、効果に触れる表現がとても出やすい業種です。
(危ない返信)
1回でしっかり効果が出る施術ですので、続けていただければ必ず変わります。
「必ず」「効果が出ます」は消してください。 良い口コミへの返信でこそ出てくる表現なので、星5だから安心とは言えません。
補足
口コミそのものは、患者さんが自分の判断で投稿したものです。ただし、それを自院のホームページや広告に転載するのは、扱いが変わります。 医療広告ガイドラインでは、患者の体験談を広告に用いることは認められていません。返信は返信、転載は転載として、分けて考えてください。
整骨院・接骨院・整体
こちらは、「治る」「改善する」という言い方が最大の注意点です。
(危ない返信)
続けていただければ、必ず改善いたします。
(直したもの)
お体の変化を感じていただけたようで、何よりです。
状態を見ながら、無理のない範囲でご案内してまいります。
前向きな返信を書こうとすると、この語が自然に選ばれます。使わない言い回しの紙に、必ず入れておいてください。
内科・小児科
ここだけ、少し事情が違います。投稿しているのが本人とは限りません。 子どもの受診について、保護者が書くことがあります。
その場合でも、書き方は同じです。誰の受診かに触れずに受けます。 「お子様の」と書いた時点で、家族構成に触れています。
ご投稿ありがとうございます。
ご安心いただけたようで、何よりです。
いただいたお言葉は、院内で共有いたします。
クリニックの口コミ返信を、続けられる形にする
型が決まっても、続かなければ意味がありません。受付の業務の中に、置き場所を作ってください。

2つ目が効きます。書いた人と出す人を分けてください。 書いた本人には、自分が足した一文が見えません。別の人が「使わない言い回し」の紙と照らすだけで、たいてい止まります。

出す前に、口コミの一覧を上から読んでください。1件ずつ見れば自然でも、並ぶと同じ文が10件続いていることが分かります。 同じ書き出しが3件続いていたら、1件だけ変えます。全部を変える必要はありません。
何を見て、どうなったら正しいのか
数える数字は3つで足ります。
- 返信率 … 届いた口コミのうち、返信が付いている割合。目標は全件
- 低評価に返信するまでの日数 … 星1・星2に限って数える。長いほど「見ていない院」に見えます
- 直近3か月の星の平均 … 全期間ではなく、直近だけを見ます
全期間の平均は動きません。 開院からの件数が積み上がっているので、いま何をしても数字が変わらず、続ける気持ちが折れます。見るのは直近3か月です。

古い未返信を全部追う必要はありません。直近3か月から始めてください。 古い口コミの返信は、あまり読まれません。
よくある質問
Q. そもそも返信しないほうが安全ではないですか
それも1つの判断です。ただし、決めたら全件同じ扱いにしてください。 良い口コミにだけ返信して低評価を放置する形が、いちばん目立ちます。
Q. 「ご来院ありがとうございます」は、本当に書いてはいけませんか
書かないことを勧めています。受診の事実に、施設側から触れないためです。 「ご投稿ありがとうございます」に置き換えれば、伝えたいことは同じまま残ります。
Q. 患者さんが書いた症状に、一言も触れないのは冷たく見えませんか
冷たく見えません。「安心して」「落ち着いて」「変化を感じて」で受ければ、通じます。 具体的な語がなくても、書いた本人には自分のことだと分かります。
Q. 明らかに事実と違う内容が書かれています。訂正してもいいですか
公開の場では訂正しないでください。「確認いたします」と「受付までご連絡ください」の2つで止めます。 否定した瞬間に、施設側が事実を主張したことになります。
Q. 院長の名前で返信してもいいですか
勧めていません。主語は「当院」に統一してください。 個人名で返すと、個人の見解として読まれます。返信は施設の判断として残すほうが安全です。
Q. 同じ方から何度も低評価が届きます
1回目だけ返信し、2回目以降は返信せずに報告を検討してください。やり取りが並ぶと、読む人には言い争いに見えます。
Q. 返信をAIに書かせています。クリニックでも使えますか
使えますが、下書きをそのまま出さないでください。 AIは口コミの内容を要約するので、放っておくと症状も来院も全部返信に入れます。渡す本文から、名前と日付を消しておくのが確実です。
Q. 星5の口コミにも毎回返信すべきですか
はい。2〜3行で足ります。 返信していない口コミが混ざると、そこだけ目立ちます。
まとめ
- クリニックの口コミ返信は、書き足す仕事ではなく削る仕事です
- 他の業種と違うのは3点。来院の事実・症状や治療内容・効果の断定
- 書き出しは「ご来院ありがとうございます」ではなく、「ご投稿ありがとうございます」
- 先に決めるのは、主語を「当院」に統一・返信する範囲・使わない言い回し
- 星5への返信は2〜3行。対応をほめられたところだけ、のびのび書けます
- 星3は謝る範囲を1つに限定する。推測して謝らない
- 星1は4原則。事実を書かない・反論しない・公開で約束しない・受付までで止める
- 歯科は担当医名と費用、美容クリニックは施術名と部位、整骨院は 「治る」の表現
- 書く人と出す人を分ける。1人で完結させない
- 見る数字は3つ。返信率・低評価への返信日数・直近3か月の平均
レビューデスクでは、口調と使わない言い回しを施設ごとに登録して、届いた口コミからその場で下書きを作る形にしています。下書きまでを速くして、削る作業に時間を使ってください。 クリニックの返信の良し悪しは、何を書いたかより、何を消したかで決まります。

